日本の中世文学、特に宇治拾遺物語集をはじめとする説話集をもとに、当時の文学・社会における女性像を探る。象徴としての、鬼や蛇、老婆、巴をはじめとする大力の女についても関連して考察を行った。文化人類学の分野の参考文献を多く取り扱う。
中世の説話における
“異人”としての女たち
(目次)
はじめに ・・・・・3
第一章 鬼と女/蛇と女 ・・・・・4~16
第二章 老いと女 ・・・・・17~27
第三章 自然の象徴としての女 ・・・・・27~37
終章 “異人”としての女たち ・・・・・37~42
おわりに ・・・・・43
参考文献 ・・・・・44
はじめに
中世には、『宇治拾遺物語集』をはじめ、『今昔物語集』『古今著聞集』といった、多くの説話集が存在する。それらに収録される作品は、仏教説話、世俗説話と大きく分類することができ、さらに、笑い話、霊異譚、童話・巷談といった分類が可能である。
説話集は、こういった様々なジャンルの作品を含むが、中世という時代柄、因果応報の色彩を帯び、仏教を啓蒙する役割を担ったとされる説話が多く収録されている。その中には、仏教の価値観において、女性は迷盲する存在として扱われるために、嫉妬や執着心を女性の業として描いた作品も数多く存在する。
そういった中世の説話集のなかで、...