ユダヤ人とホロコースト
「ユダヤ人」とは
そもそも、ユダヤ人とはどういった民族なのか。「ユダヤ教徒」という宗教的定義と、「母親がユダヤ人」という人種的定義がある。古代パレスチナに居住していたイスラエル人の時代から続く集団であり、その定義は難しい。
『旧約聖書』によれば、メソポタミアのウルからの移住者はアブラハムに率いられてカナンの地に入ったが、ヤコブの一族はさらにエジプトに移住した。やがてファラオの圧制を受けたため、前1230年ころモーセに率いられて、「出エジプト」を敢行した。カナンに戻る途中、シナイ山で「十戒」を中心として神との間に契約を結んだが、これは12部族が宗教共同体としてのイスラエル(ユダヤ)民族として成立する画期となった。彼らは原住のペリシテ人と抗争しつつカナンに定着し、前1000年ころサウルのもとで王制を敷いた。ヘブライ王国は、エルサレムを都と定めたダビデや、神殿を建設したソロモンによって全盛期を迎えたが、ソロモンの死後、北のイスラエル王国と南のユダ王国に分裂した。その後イスラエル王国は前722年にアッシリアに、ユダ王国は前586年に新バビロニアに滅ぼされた。ユ...