【無料公開】中央大学通信教育部法学部「行政法1」合格レポート2011年第1課題第2課題第3課題第4課題セット

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    資料の原本内容

    第1課題
    行政法関係には、権力的な関係と非権力的関係があると言われている。権力的な関係はどのような特色をもっているか。非権力的な関係と対比して、実定法(訴訟制度、強制制度等)との関係を考慮しつつ検討しなさい。
    第2課題
     行政行為とはどのような行為か。これにはどのような効力が認められるか。また行政行為に瑕疵があったときには、どのような効力が生じるか。実定法制度とも関連させて検討しなさい。
    第3課題
     行政活動に裁量が認められるとき、たんに当・不当の問題が生ずるのみか。それとも違法と判断される場合もあるか。違法と判断される場合があるとすれば、それはどのような場合か。
    第4課題
     行政活動は、どのような手続制約に服することになるか。許認可をする場合の手続、不利益処分をするときの手続に分けて論じなさい(単に、行政手続法を書き写すだけでなく、判例の動向をもふまえて解答しなさい)。 第1課題
    1.行政法関係における権力的な関係とは、権力的特殊性が認められる行政上の法関係をいう。他方、非権力的な関係とは、権力的特殊性によらない行政上の法関係をいう。
    行政活動には、何らかの公共性が認められるべきという社会的要請があり、それを根拠として、行政権の行使に関する法的規制には特殊性が認められる。
    行政法に特殊性を認めるための考え方として、公法・私法二元論は、法律の制定以前の論理的要請とし法律の規定はこの当然に認められるべき特殊性を確認したものにすぎないとし、この特殊性の認められる領域には、私法規定の適用はないと考える。他方、私法一元論は、行政権に関する法的規制に特殊性が認められるのは、法律の規定がこの特殊性を実体法的に承認したことによるのであって、法律の規定が特殊性を認めていない場合私法の適用があるとする。
    思うに、実定法の根拠を欠く特殊性を認めることは妥当でないから、特殊性を認めるべきという社会的要請が実定法の中に取り入れられて初めて法的特殊性となると考えるべきである。
    2.権力的関係の法的仕組みについて検討する。まず、行政権行使に関する要件・効果に関する特別な規定を定めることにより実体法的特殊性が付与される。さらに、手続法における特殊な規定によって、権力性、優越性が明確となる。
    特殊な手続法としては、第一に訴訟手続をあげることができる。
    1)取消訴訟の出訴期間の制限(行政事件訴訟法14条)
     出訴期間の制限がある場合、この期間を過ぎれば、訴訟を提起することができなくなり、行政機関が職権によって取り消さない限り、私人はその行政活動に従わなければならない。
    2)執行不停止(同25条)
     訴訟が提起されても、行政活動の効力や手続の続行、執行は妨げられないとする。執行には別の法制度が必要であるという点を考慮しても、優越性を支える制度といえる。
    3)例外的な審査請求前置(同8条1項但書)
     行政事件訴訟と行政不服審査の関係について、原則自由選択主義であるが、例外的に不服審査の後でなければ訴訟を提起することができない。
    ここで、行政事件訴訟法が規定する「公権力の行使」という概念は明確でないため、その解釈が問題となるが、何が「公権力の行使」にあたるのかは、個々の法律の趣旨を解釈することによって決定すべきである。
     第二に、特殊な手続法として、強制制度がある。これにより、自力救済の禁止の原則に関係なく、裁判所を介さずに行政機関の独自の判断によって、義務の強制的実現が認められる。
     第三に、行政立法により処罰規定を設けることも特殊な手続法といえる。この場合は、憲法73条但し書、法律(内閣法11条、国家行政組織法12条3項等)の規定により、一般的に公権力的拘束性が認められてきたと解すべきである。
    3.非権力的関係の法的理解は、権力性が欠如しているという性質上、論理的に対等当事者間の関係とする見解が支配的である。しかし、権力性を伴わない行政作用の概念が明確でない。むしろ、私人に義務を課するとか、私人の権利利益を制限するという効果を伴わない行政作用であると考えるべきであろう。
     非権力的関係には、私人と行政との関係が契約の形で形成されるものと、契約によらず一定の物的施設等を設けて、これを利用させるものがある。
     契約形態で、役務の提供等が行われる場合、その法関係の実現には行政主体の優越的意思の発動は必要とされないため、当然国民に対しての優越的権限行使の具体的実行的実現を図る特別規定は必要としない。その特殊性は、専ら実体法上で公益を確保する為の特殊性が付与されることによって、確保されるのである。
     非権力的な行政作用における法的な紛争の解決方法は、権力的に取扱うことが法律上明確でない場合には、基本的に民事訴訟法によることになる(大阪高裁40年10月5日行裁例集16巻10号1756頁)。
    4.権力的関係では、一方の当事者である行政権に優越的地位を認めることになるから、その限りで対等当事者関係を規律する私法は原則として適用されないが、私法規定が法の一般原則(権利濫用の原則、信義誠実等)を規定している場合には、権力関係にもこれらの規定が適用される。
    これに対し、非権力的関係については、特別の法律の規定がない限り、私法規定が適用される。
    しかし、判例には、権力関係に私法規定(民法177条)の適用を認めるものもあり(最判昭35年3月31日民集14巻4号663頁)、非権力関係に民法、借家法が全面的に適用させるわけではないとするものもある(最判昭59年12月13日民集38巻12号1411頁)。
    このように、権力的関係と非権力的関係という区別は、私法規定の適用の十分な基準ではなく、行政活動を規制している個々の法的規律の趣旨によって決定すべきものである。
    5.以上のように、行政法関係には実定法により特殊性が付与される。それは、実体法と手続法によるものであるが、特に権力的関係の公権力性、優越性は手続法により明確となる。そして、特殊性の内容・範囲や、権力的関係に対する私法適用の基準は、実定法との関係で注意深く決められていかなければならないのである。
    参考文献
    中西 又三『行政法1』(中央大学通信教育部、改訂版、2010)
    塩野 宏『行政法Ⅰ第5版』有斐閣、2009)
    第2課題
    1.行政行為の意義
     行政行為とは、行政主体が法の下に法の規制を受けながら、公権力の行使として国民に対し具体的な法的規制をする行為である。
     そして、行政行為は、法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為に区別され、さらに、法律行為的行政行為は命令的行為と形成的行為に分けられる。
     法律行為的行政行為とは、行政庁の効果意思の表示たる行為であり、その法効果は、行政庁の効果意思によって定められる。命令的行為とは、本来国民がもっている自由を制限する行政行為のことであり、下命・禁止、許可・免除などがある。形成的行為とは、本来国民がもっていない権利などを与える行政行為のことをいい、認可、特許、設権行為、代理などがある。
     準法律行為的行政行為とは、効果意思以外の行政庁の意思、認識、判断の表示たる行為であり、その法効果は法令が直接に定めるところによる。確認、公証、通知、受理などがある。
     ほかに、行政行為の区分方法として、義務づけ行為、義務解除行為、義務づけを前提としない地位設定行為に分ける考えもある。
     附款とは、行政主体が行政行為の効果を制限するために、主たる行政行為に付す従たる行政行為をいう。行政行為の法的効果は、本来法律の規定で定められるが、具体的事情に応じて、その効果の一部を制限して、より状況に応じた状態で行政行為を行うために附款が認められる。附款の種類には、条件、期限、負担、撤回権の留保、および、法律効果の一部除外などがある。
    2.行政行為の効力
     行政庁が行政行為のための意思を決定してこれを外部に表示することによって、行政行為が対外的に認識されうる状態になれば行政行為が成立し、次のような効力を生じる。
    1)公定力
     公定力とは、行政行為に瑕疵が存在しても、当該行政行為の効力が、権限ある行政機関または裁判所によって除去されるまで、関係行政機関及び当事者・関係人を拘束する効力をいう。その機能としては、紛争処理の合理化・単純化機能、紛争解決結果の合理性担保機能、他の制度的効果との結合機能がある。
     公定力の根拠は取消訴訟の排他的管轄にある。行政事件訴訟法3条2項は、行政行為の効力を争うことができるのはこの制度だけであると解釈することができるため、取消訴訟以外では裁判所といえども行政行為の効力を否定できないという公定力の効果が行政行為に認められるのである。
     しかし、瑕疵がある行政行為に公定力を認めることは問題があるため、以下の場合は、公定力が及ばない。①国家賠償請求の場合(最判昭36年4月21日民集15巻4号850頁)、②刑事裁判手続の場合(最判昭53年6月16日刑集32巻4号605頁)、③行政行為が無効の場合などがあげられる。
    2)不可争力
     違法な行政行為が存在しても、一定の期間が経過した場合には、行政行為の相手方が争訟を提起できない効力である。その根拠は、行政事件訴訟法第14条および行政不服審査法第14条に求められる。但し、出訴期間が極端に短い場合には、憲法第32条に違反するものと評価されることになる(最判昭24年5月18日民集3巻6号199頁)。
    3)執行力
     行政行為の内容を、行政機関が、裁判所の判断を媒介とせず、法律の定めるところにより、自力で実現しうる効力である。その根拠は、行政不服審査法第34条第1項、行政事件訴訟法第25条第1項...

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