美術史 分冊1
日本大学 総合教育科目
白鳳時代の仏像
白鳳時代とは、天智元年(662年)から和銅3年(710年)の平城遷都までの時期であり、彫刻においては、より現実的な人体表現への傾斜が顕著となり、また、進んだ写実様式やそれにふさわしい新しい造像技法がつぎつぎに大陸から入り込み、新旧の交わりの中で、複雑な展開をとげた時代であった。
白鳳時代の彫刻における特徴として、やわらかみのあるモデリングや左右非相称の衣文処理があげられ、丙寅年(666年)銘の野中寺銅造弥勒菩薩像にその特徴があらわれている。
また、法輪寺木造薬師寺如来像と同伝虚空蔵菩薩像にも、飛鳥時代の古様が残るものの、表情や衣文処理に同様の白鳳時代の特徴がみられる。
天智9年(670年)の法隆寺火災後、その再建期には、やや間延びした顔つきや胴長で短足な体つきにかわいらしい特徴がある、いわゆる「童顔童形」像があらわれ、木彫では法隆寺金堂中の間および西の間天蓋天人像、同大宝蔵殿六観音像、奈良・金隆寺菩薩像、ブロンズ像では、法隆寺大宝蔵殿観音菩薩像2軀、法隆寺献納宝物の中の数体がその代表である。この中には、台座蓮...