改正法では、専決規定による不正処分の場合、その内容が公表されていないために、処理責任者を特定することが住民側に困難であることに配慮し、住民は地方公共団体(C県)に対して「不正処理を行った者(B)に対して損害賠償請求をしろ。」ということを求める義務付け訴訟をすることとなった。C県住民は、C県に対して「総務課長Bに対して不正処理をした者として損害賠償請求をしろ。」「知事Aに対して、不正処理をしたことに対する指揮・監督責任を追及しろ・」という訴えを提起することができる(知事に対する請求は明文規定はないが前傾判例の判旨から解して可能と考えられる)。
旧規定では、本来損害賠償請求権行使すべき県に代わって住民が代位してその権利を行使するという形で住民訴訟が行われてきたが、改正規定により、住民が県(本来、請求権を有する自治体)に対して、損害賠償請求権の行使を義務付けるという形に改められた。これにより、地方自治法242条の2第1項4号に基づく住民訴訟の被告は自治体のみに限定されることになり、住民側敗訴の場合に被告となった職員の弁護士費用を県が負担すべきかどうかという問題や、形式的責任者と実体的行為者が異なる場合の被告はいずれであるかといった問題が解決された。
行政事件訴訟法
『改正・住民訴訟』
問題)C県庁では、食料費支出決定権者を、財務規則で、水道企業管理者である知事Aとしていた。しかし、100万円以下の食料費支出においては、同県の通達である専決規定で、総務課長が専決すると定めていた。なお、財務規則は公表されているが、専決規定は公表されていない。2003年12月1日、この県庁の土木部土木課では、職員の忘年会費を捻出するため架空の会議をでっちあげ、100万円の食料費支出を総務課長Bに申請した。総務課長Bは架空の会議であることを知り、食料費支出承認に躊躇したが、Aが支出するように命令してきたため、やむなく100万円の支出を承認した。
この事例において、この県の住民が知事Aと総務課長Bの責任を問うための訴訟手段を説明し、そこにおける問題点を論じなさい。
財務会計上、不正がある場合には、その地域に居住する住民は誰でも監査請求をすることができる。監査結果に不服のある場合においては、当該住民は住民訴訟を提起できる(地方自治法242条の2第1項)。住民訴訟は処分行政庁を被告として行う(行政事件訴訟法11条)。最も多く行われるのは、地方自治法2...