第2設題 医療をめぐる法律問題について。
はじめに
現代における医療と法の関係を論じる場合、大きく二つの側面からアプローチすることができる。第一に、医療における患者の権利の確立に関する諸問題である。従来の医療は、恩恵的・権威主義的な色彩を帯びており、必ずしも患者の立場に立ったものではなかった。近年、こうした医療のあり方が反省され、医師と患者の権利義務関係に基づいた関係に変えていこうとする動きが顕著である。こうした側面の具体例としては、患者の自己決定権の承認や、医師の医療過誤責任を追及する訴訟の増加があげられる。そして第二には、医学の急速な進歩により生じてきた一連の問題である。医療技術の進歩は、人間の誕生や死をもコントロールするような場面に接している。代表的には生殖補助技術や脳死臓器移植問題などがあげられよう。以下本論では、第1・2節において第一のアプローチを、第3・4節において第二のアプローチをまとめていく。
患者の自己決定権
先にも触れたように、従来の医療は恩恵的な性質をもっており、医師患者関係も医師の権威主義の影響のもとにあった。しかし近年、医療における患者の主体的地位を尊重す...