PTSDとは、生命にかかわるような危険(戦争・災害・事件など)を体験したり目撃した人間の対処能力を超えるような圧倒的体験をすると、そのストレスがトラウマとなり、特徴的な症状が続き、生活に支障が出る病気である。それは単に心理的な影響を残すだけでなく、脳に「外傷」をつくり、生理学的な変化を起こすことが研究で明らかになっている。具体的には、海馬が発達できず萎縮する、ブローカ中枢部の機能低下、扁桃体領域の血流低下、といった脳の発育へのダメージがいわれている。このような研究が盛んになったのは、1970年代の米国におけるベトナム戦争の頃からであり、PTSDは一つの病気として認められてからの歴史が浅く、「自分が弱い証拠」「甘え」「気にしすぎている」などと誤解されることが多い上に、医療の場でも認識が遅れており、初診の段階で見落とされたり誤診されるケースがある。また、トラウマ体験をしても全ての人がPTSDになるわけではなく、発症には与えられたストレスの強さと、本人の性格傾向や感受性の程度(ストレス耐性)など様々なリスク因子が関わるといわれている。
PTSDの症状は概ね3タイプに分けられ、①再体験症状…ト...