世界と日本のドストエフスキー研究、そこからさらに発展して文学研究の最高、最新の達成をすべて駆使しながら、1つも彼の作品を読んでいない人でも容易に且つ楽しみながら読める分かりやすさがある。つまり、簡単に言い換えると、どんな凡人でもドストエフスキーの非凡さを簡単に理解することができるということである。その大きな理由は、本書は12の講義から成り、毎回、波乱に満ちた作家の生涯を時系列でたどる「伝記」のようなもの、作家自身が多大なる関心を寄せた当時のロシアの殺人事件や革命派によるテロ事件を概観する「事件と証言」のようなもの、分析対象の作品を紹介する「テクスト」のようなもの、そしてそれに著者による考察があって、最終的には読書案内のようなものに仕上がっているからではないでろうか。その道しるべにしたがって、たいていの人間も奥深いドストエフスキーの森の中で道に迷わずにいられるのである。
退廃を極め犯罪とテロに揺れる19世紀ロシア社会を、まるでドストエフスキーとともに自らもがそれを経験したかのように傷つき、さらには苦しみながら生き抜き、苦悩を糧として作品を生み出していくプロセスを深く感じさせるものとなっている。
第一章
この本は、端的に評すると非常にエポックメーキングであり、大胆不敵なものである。というのは、とてつもなく魅力的で且つ底知れない奥深さを持つドストエフスキーという、世界の文学界の中でも巨頭の域に達していると思われる人物の膨大な作品を、さまざまな細部も丸々すべてを網羅しようとしているからである。はっきりいって、このような無謀に近い試みは、著者以外に誰も思いつかなかったし、あるいは思いついても試そうとしなかったのではないだろうか。しかしながら、ここではその不可能に近いこととされていることが実際になしとげられている。そして、そのような試みの集大成がこの本となっている。
世界と日本のドストエフスキー研究、そこからさらに発展して文学研究の最高、最新の達成をすべて駆使しながら、1つも彼の作品を読んでいない人でも容易に且つ楽しみながら読める分かりやすさがある。つまり、簡単に言い換えると、どんな凡人でもドストエフスキーの非凡さを簡単に理解することができるということである。その大きな理由は、本書は12の講義から成り、毎回、波乱に満ちた作家の生涯を時系列でたどる「伝記」のようなもの、作家自身が多大...
また、第一章は何の本を読んでのレポートなのかがわからない