Z1307教科教育法国語1第2設題のレポートです。
中学三年生の伝統的言語文化の教材として取り上げられている「平泉」(『奥の細道』,松尾芭蕉)の構造と特質について指摘しつつ教材分析を行った上で、学習指導の方向性について言及し、レポートすること。
1.「平泉」の構造と特質
奥の細道は、松尾芭蕉が元禄時代に記した紀行文であり、日本の古典における紀行文の代表とも言える作品である。しかし、紀行文とはいえ、作品中に多数の俳句が詠み込まれている俳文の要素や、数々に虚構の部分から成る文学的作品としての要素もある。「旅行の行程をたどるように、体験した内容を記した文」という一般的な紀行文とは、内容的にも形式的にもやや異なっている。
「平泉」は藤原三代の栄華の跡地である岩手県平泉町を背景に詠まれた作品である。芭蕉はその地で、自然の悠久さ、時の流れの無常観と、人間の営みの儚さについて涙を流すというものである。「奥の細道」は漢文調であり、時代背景も複雑であることから、現代の中学生にとっては、なかなか想像ができず理解し難い部分もあると思われる。そんな中、少しでも芭蕉の思いに迫り、自然の悠久さと人間の営みの儚さは現代でも変わらずにあるということの気付き、人間の...