「日本とアメリカの老人ホームの特色や相違点について概説し、わが国の老人福祉施設をめぐる今日的課題について述べよ。」
〈日本の老人ホーム〉
日本の福祉は、近年まで措置制度が採られていた。措置制度は、行政が高齢者の身体状況などを調査し、入所などの決定がされていた。また、提供されるサービスの内容から職員の配置、料金まで行政が決め、費用については措置費として税金で賄われていた。このため、福祉や医療の世界で競争原理が働きにくくなっていると考えられる。また、高齢者を施設へ入所させるよりも、病院入院させるほうが手続きも簡単で経費も安く済むことから、長期入院(社会的入院)という問題がみられた。
社会の変化に伴う利用者の福祉ニーズの多様化・複雑化に対応すべく、2000年に社会保険制度である公的介護保険が導入された。介護保険制度は利用者自らがサービスを選択し、福祉と医療の両分野のサービスを総合的に受けられるようになり、費用についても利用者の1割負担となった。これに伴い、福祉サービス全般にケアマネジメントのようなサービス提供の手法の確立が必要となり、ケアマネージャーの養成、介護保険事業計画のガイドライ...